2021/11/05 |

tac:tac【Patterner’s Eye / 002】

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Patterner’s Eye / 002

デザイナーが作成したデザイン画をもとに意図やニュアンスを汲み取り、実際に服の造形を作る役割を担う、
「パタンナー」という職種があります。
今回はそのパタンナーの視点でtac:tacの商品を解説いたします。

tac:tacパタンナー、島村に今シーズン21AWの商品について語ってもらいます。
是非ご覧ください。

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— 今季21AWコレクションのテーマが「Colors」でした。全体を通して伝えたかった事はありますか?
島村:「 Colors 」というテーマは、季節や時間の移ろいを、人々が服を重ねて着ていく行為と、その服自体のカラーによって表現されています。
季節が移ろい、気温が下がるにつれて人々の装いも、ボトムスとシャツから、ベスト、ジャケット、コート、のように少しずつ厚着になっていく時、その服達の色もアウターになるにつれて段階的に濃くなっていく。
服をレイヤードして着てみる、少し苦手に思っている方もいるかも知れないですが、色をきっかけにトライしてみるのも、洋服を着る楽しみのきっかけになるかもしれないと思います。
また重ね着したときに重量が重くなりすぎないよう、服を軽く仕立てる工夫が各所に施されているアイテムも多くありますので、そういった目線でも見ていただけると、また少しの発見があるかと思います。
tac:tac の洋服ではもちろんのこと、皆さんがお手持ちの服と合わせても、色づくスタイリングは楽しめると思いますので、ぜひ日々の生活でも「 Colors 」を少し取り入れた日常を過ごしてみてください。
 
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— 今コレクションは、パイピング使いの商品が多く見受けられました。
着想になったモノ(コト)や、製作するうえでのエピソードなどあれば聞かせてください。

島村:ウールの洋服は重たいというイメージを持っている方も多くいるのではないでしょうか?その印象を覆す”軽く、軽快に着れる” ことを考える中、服のライナーというものにデザイナー島瀬が気づいたことが、この仕様にたどり着くきっかけとなります。
※ライナーとは、アウターの内側に付いている取り外し可能な裏地のことを指します。古着屋でミリタリーのライナーなど見かけた方も多くいるのではないでしょうか。
 

島村:ライナーの始末も多々ありますが、今回 tac:tac ではパイピングで仕立てられたものにフォーカスしています。そのメリットとして、袖口、裾、身頃の前端などの厚みも抑え、少しでも軽く、かつ美しく仕上げることができるのが特徴でしょうか。

そこからのtac:tacならではの更なる発展が、”パーツを叩きつける”という考え方でした。洋服を組み立てる前に、全てのパーツをパイピングで始末しておき、あとは重ねて叩くだけ、というシンプルな工程です。
”パイピング”、”叩きつけ” という考えに、通例どおりの ”縫い合わせ” を、全体とアイテムのバランスを見つつ組み合わせて構成されています。

実際は口でいうほど簡単に縫えるというものではなかったのですが、ここで得れた効果は厚みを抑え、軽くすること意外に、LIGHT MELTON シリーズにも見られるように視覚的にも面白いものになっていると思います。

 

島村:衿などを立ててもらうと、普段服を着ていて気にすることはないけれど、実はこんな「変な形」をしたパーツがあったんだと、ちょっとした不思議も発見していただけると思います。

 

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— 裏返してみると、また表情の違うコートですね。
島村:背中の部分に裏地を叩くことには、着用時の滑りをよくして着脱や日常の動きをスムーズにさせる機能があります。その点は周到してあり、裏返して着たときにはアクセントにもなっています。また、裏返したときには袖や脇などの縫い代とパイピングが表に出てくるので、また違った一面に出会えると思います。その日の気分によって色々な着方をして楽しんでもらえれば嬉しいです。

 

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— パイピングが飛び出したようなデザインも多かったように思います。
島村:パイピングを用いて一回で始末しようとすると、衿先が丸くなるので、シャープな角のエッジを持たせたいときには、写真のように始末することで角も出せ、延長したテープもデザインとして昇華されています。またこのシャツの脇のパイピングも延長してますが、古着のワークシャツの脇のステッチが延長されて糸が垂れているものを見たことはないでしょうか。その始末の仕方にインスパイアされて、この位置のパイピングも延長させていたりします。ただ伸ばすだけではなく、何故そのように伸ばすのか、実はそういったところにも小さなストーリーはあります。

 

— 見た目は「シャツ」ですが、着た時のボリューム感やシルエットはブルゾンのようですね。
島村:全体的なサイズはいわゆるシャツよりはかなり大きく作られています。冬にはもちろんインナーとして、秋口や春先にはガサっと袖を通してシャツブルゾンとしても着ていただけます。また後ろ身頃にはベンチレーション(通気孔)もデザインとして組み込んでいて、その入り口もパイピングで始末することで、バックスタイルのアクセントにもなっています。

 


 
 

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— 今シーズンのUN(I)FORMは今までとは全く違うアプローチだったかと思います。
島村:今までのUN(I)FORMシリーズは、ウールとポリエステルの混紡だったのですが、今回はウール100%で柔らかく、上品なドレープの出る素材を製品染めで仕上げることで、今までのシリーズには無かった品と、加工した獣毛のいい粗野感が感じられます。過去のUN(I)FORMには無かったこの上品なドレープを活かしつつ、いかに服のニュアンス、ムードを表現していくか。それが今シーズンでの課題でした。

 

島村:少し話がコレクション全体に及びますが、この”服のニュアンスムード”というキーワードが、形を作る上で、シーズンを通して非常に大切なものでした。今まで自分が洋服を形作ってきたロジックだけで全てを作り終えない為には何をどうするか、という考えを常に念頭に置いたシーズンになり、その意識は今も継続して強く持っていることです。

 

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島村:そんな中でUN(I)FORMシリーズでフォーカスしたのは”肩周りと袖付き”でした。いわゆる美しいとされるジャケットとは違い、身体に合っていない不思議な印象に仕上げること、あえて強く崩す作業を模索しました。

 

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島村:この図は、今回のジャケットのパターンのアウトラインになります。
パターン(型紙)上の設計の特徴として、首元から肩先にかけて肩線をなだらかにせり上がらせ、布を体から離れるようにすることで、身体と洋服の間に敢えて“不要な空間”を作りました。
着用時にはそのゆとりがドレープとなって現れるのですが、それによって“不要な空間”が、“有用な違和感”に変換され、最終的には“洋服のニュアンス”へと生まれ変わりました。
服が内包する空間、そんなことを意識して身にまとってみることも、もしかしたら新しい服の楽しみ方かもしれません。
— パンツの裾の絞りが目を引くデザインの一つでした。
島村:またボトムの変化としては、ポケットのアシンメトリーなデザインに加えて、裾を絞ってシルエットの変化を楽しめる点が挙げられます。ある意味すごく単純なことなので、”なんだそんなことか”と思われるかもしれませんが、裾から少し距離を置いた部分を絞るようになっているので、一度細くなってまた裾に向かって少し広がるようなシルエットに変化し、いわゆる裾で絞るパンツとは違った変化を演出しています。

 

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島村:21SS から UN(I)FORMシリーズの新たな提案として、アイテムやシーズンを跨いでボタンを掛けて切れるレイヤードする着方は、21AWでも引き続きお楽しみいただけます。今回は21SSのジャケットに、21AWのコートを掛け合わせて、素材、シーズン、アイテムをまたいでみました。

 


 
 

— 落ち感がとてもきれいなCOTTON TWILLのシリーズについて、コートのギミックや、パンツのシルエットなど、ディティールに拘った部分を聞かせてください。

 

島村:コートの衿はかなり高さのあるスタンドカラーになっていて、本来この高さであればボタンで留められるようにすることが多いのですが、敢えてボタンをつけず衿をきれいに収めないことで、固定されないが故にくたっとなる襟元のニュアンスを狙っています。正解を作らないことで、立てたまま着ても、折り返して着てもいい、こちらが正解を決め付けない選択をすることもまた、手にとっていただいた方が洋服の着方の自由さに気づけるきっかけだと考えています。この服を着る人達それぞれが発見した着方やバランス、その一つ一つが正解なのです。
 

島村:またこのコートは贅沢にたっぷりと使用した生地の分量も楽しんでもらいたいです。共布のベルトでざっくり絞ると、背中のヨークとのボリュームのコントラストも楽しいポイントですし、またそのベルトを衿の後ろのループに留めて首から垂らすことも、巻くこともできます。
シンプルなことで、様々な可能性を発見できます。このコートで見つけた楽しみ方を、是非他の色々なものでも試してみてください。

 

島村:パンツは筒がツイストさせた構造になっているので、履くと脚に沿って布がゆるりと巻き付いているような印象になります。このツイストですが、ねじっているように見えるのですが、形の操作の意識として人の脚のライン、特に膝頭の膨らみと膝裏のへこみ(または膝を少し曲げた状態)を誇張して布に表していった結果、ねじれたようなドレープとして現れていることが、構造と現象のバランスを考える上で興味深いところでした。

また個人的には太めのパンツの裾をワンクッションさせて履くには、少しヒールのある靴でないとかかとで裾をずってしまうことが苦手なのですが、ツイストのドレープの見え方が、裾が少しワンクッションしているように感じ、擬似的なパンツのワンクッションを体感できるところも気に入っているポイントです。

 

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— ベストはかなりミニマルなデザインですが、とても存在感がありますね。
島村:ベストはパターン1枚だけのミニマルな構成でできています。
肩線だけを縫い合わせて構成しているので、シルエットのコントロールを行えるポイントはかなり制限されることになります。ではどこでコントロールしているかというと、このベストを着て、腕を下ろした状態、その ”腕を下す動作” に着目しています。

どういう事かと言いますと、腕を下すと身頃が押されます、するとその布の動きは結果的に肩にも作用することになり、肩先が身体に沿って少し落ちてくることになります。
その作用を利用するために、肩線、腕を通すアームホールの深さ、加えて身巾のバランスを調整することになりました。

またこのアームホールでもパイピングを活用することによって適度な張り感を持たせていることも、シルエットを作るポイントになっています。

 
 

島村:”Patterner’s Eye / 002” はここまでとなります。
第一回目と比べてもう少し服の構造に踏み込んでお話してみましたが、如何だったでしょうか。
この ”Patterner’s Eye” という企画が、tac:tacの服はもちろんのこと、日常の中で様々な服を見るときの ”新たな視点のきっかけ” に少しでも繋がれば幸いです。

tac:tac
島村

 
 


 

今回もパタンナーとしての目線で、2021AWコレクションについて語ってもらいました。
tac:tacの洋服がどのような背景で作られたか?どのような意図で作られているか?少しでもご覧くださった方々に届けられることを願っています。本ページを読む前とは少し違った目線で2021AWコレクションをご覧ください!

 

 


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