2024/07/22 | NYA-, FEATURES

双子の刺繍アーティスト・KENDAIとNYA-の出会い

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今年再始動した黒ねこをモチーフとしたブランドのNYA-が、双子の刺繍アーティスト・KENDAIと出会い、ワイルドだけどどこか優しい、不思議な魅力をもった姿へと変身しました。
1989年生まれの二人が、“あのころ”のエイ・ネットの記憶と、刺繍という視点から、どうNYA-を再解釈したのでしょうか。
KENDAIらしさが詰まったNYA-の刺繍デザインと、1点モノのコラボアイテムの魅力、その制作の裏側を知るために、府中のアトリエにお邪魔しました。
 

・「布の彫師」刺繍アーティスト・KENDAIさんって?
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プロフィール:
刺繍は「布の入れ墨」という解釈の元、ハンドメイドに拘った布の彫師。1989年生まれの双子が生み出す手刺繍の世界観。2018年より刺繍作家としてKENDAIをスタート。左/大地さん、右/建太さん
2018年から刺繍アーティストとして活動する大地さんと建太さんは、なんと双子のユニット! なぜ、刺繍という方法で表現を始めたのでしょうか? 学生時代は古着を好んで着ていたというお二人のルーツや、当時のエイ・ネットとNYA-への印象とは?
 
ーーエイ・ネットのブランドは以前から見ていらっしゃいましたか?
大地:そうですね。もともと僕らは文化服装学院という服飾の専門学校に通っていて、僕はファッションデザイナーになりたいと思っていたんですね。エイ・ネットのブランドは周りからも人気だった印象です。僕自身にとっても憧れでした。
ーーお二人とも同じ学校に?
建太:はい、二人とも。僕はパタンナーっていう型紙をひくコースに行っていました。
大地:僕はデザイン科でした。二人で同じ専門学校へ入学して、何か将来一緒にやりたいなと思っていて。大したものではないんですけど、一応、二人とも軽くパターンを引けます。僕は、学校を卒業して1年くらいしてから、アルバイトでエイ・ネットのZUCCaのパターンアシスタントを、1シーズンだけお手伝いしてたんですよ。
なので、エイ・ネットからコラボの話が来た時、最初は普通にびっくりしました。「おー、きたー!」みたいな。なんだか、帰ってきた、みたいな気持ち。僕らみたいな若手が、憧れていたエイ・ネットとコラボできるんだって思って嬉しかったし、一緒に取り組んだらどんなものができるかなって想像すると、ワクワクして。純粋にやってみたいなと思ったんです。
建太:このような大きいメーカーとのコラボは初めてなので、一緒に服を作っていけるのが楽しみだと思いました。
ーーNYA-も知っていましたか?
大地:はい。このキャラクターはとてもアイコニックで、自分の中にも定着していたので、「あ、あのNYA-だ」と。お話をいただいて、久しぶりだなっていう感覚でしたね。
建太:そうそう。
大地:僕自身はNYA-の服を身に着けることはなかったんですけど、学生時代、周りにエイ・ネットの服を着ている女の子がすごく多かったですね。ちょっと個性的な人が着ていて、割と面白いデザインのアイテムが多い。ダルーンとしている、フードに耳が付いているパーカーとか、よく覚えてる。
・2000年代、「ウラカシ」の古着カルチャー
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ーーKENDAIさんの学生時代のファッションはどんな感じだったんですか?
建太:僕らの地元の千葉県柏市って、古着屋がたくさんあるところで、街をぶらぶらしていると自然に目に入ってくるので、それで洋服が好きになったんです。文化服装学院に入ってからは、ブランドも見るようになったので、いろいろ着て試してましたね。奨学金を使って20何万のコートを買って、「学費どうしよう!」ってなってました(笑)。
ーー1989年生まれのKENDAIさんの少し上の世代には、いわゆるB系の、HIPHOPやR&Bから影響を受けたファッションスタイルの人たちもたくさんいたと思います。そんな中で、なぜ古着に魅力を感じたんですか?
大地:うーん。なんで古着にいったんだろうね。その頃、割とインディーズバンドが流行っていたじゃないですか。マイナーな音楽にも影響を受けていたから、自然と古着に目が向いたのかな。
古着屋には当時流行っていたアメカジもあったけど、ジャンルは結構ぐちゃぐちゃしていた記憶があります。「ウラカシ*」とか言われていましたね。当時は別に原宿まで行かなくてもいいかなって思えるくらいの場所だったんですよ。
*柏市三丁目エリアを中心に、個性的な古着屋やセレクトショップの出店ラッシュが相次ぎ、若者を中心に賑わいを見せたエリアの通称。「裏の柏=ウラカシ」。
ーー地元で過ごしていた時の感覚と、都内でファッションの勉強を始めてからの感覚では、どちらが今に活きていますか?
大地:それは多分、都内へ来てからの感覚の方が強いと思いますね。専門学校の友達に囲まれて、そこからものの見方のポイントが変わっていったような感じがします。さらに、ものづくりを始めたことで、「これはどうやって作ってるんだろう」っていう視点が大きくなりましたね。
ーーものを作り始めてから、着る服も変わりましたか?
大地:変わりましたね。学生の時は目立ってナンボだと思っていたけど、段々そういうのに疲れちゃって。それから気楽に着られるアメカジが好きになって、スカジャンにもハマって集め始めたのをきっかけに、刺繍が好きになっていきました。さすがにスカジャンを自分で作るのは難しいけど、ベトジャン(ベトナムジャケット*)なら作れるだろうと思ったところから、KENDAIの刺繍がいつの間にかスタートしていったんです。
*1960〜70年代、ベトナム戦争から祖国に帰還する米兵が、土産物として寝袋やパラシュートの生地にベトナム由来のモチーフの刺繍を施して仕立てたとされる、襟付きのライトアウター。
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大地:僕らの刺繍制作は基本独学で、図案を色塗りしてるような感覚で縫っているだけで、大した技術とかそういうのは使ってないんですよ。
建太:刺繍って難しそうに見えても結構シンプルで、基本を覚えられれば縫えるようになるまでそこまで時間はかからないかもしれません。
・パンサーから着想を得たポップでアクティブなKENDAI版NYA-
2024年2月にリニューアルしたばかりのNYA-。NYA-の顔をもう一度広めたいという願いと、ブランドが尊重する「ユニークさ」を押し出していくことを考えたとき、KENDAIさんならではの雰囲気やタッチがぴったりだったことから、今回のコラボレーションが実現しています。ここからは制作秘話について伺います。
大地:エイ・ネットさんからは、KENDAIらしさを残しつつNYA-を活かせるようなデザインを、というリクエストをもらいました。僕らは「布の彫師」というコンセプトで活動していて、タトゥーのモチーフをよく使うのですが、NYA-をどうタトゥーに寄せるか悩みました。そこで、パンサー(黒豹)の要素を取り入れることにしました。猫のモチーフがタトゥーに登場するのは珍しいのですが、パンサーはタトゥーでもよく使われるんですよ。
建太:ちょっとふざけて、三つ目のNYA-でも作ってやろうかな、くらいの意気込みはありましたね(笑)。大地の図案からどれが選ばれるのか楽しみでした。
大地:また、もともと「KENDAIくん」というモノクロのキャラクターを作っていたので、同じモノクロのNYA-ともシンクロするかな、という感覚はありましたね。普段から僕らはかっこいいだけでなく、ポップでかわいいものを作っているので、組み合わせても違和感ないだろうと思ったんです。その上で、どれくらい崩すかを考えながら案を出していきました。
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建太:“KENDAI版NYA-”の性格は、やんちゃで、僕らに似ていると思います。KENDAIくんは、ゴリラがモチーフなんです。僕ら二人は割と穏やかな性格なんですけど、一番上の兄ちゃんが、少しオラオラ系なんですよ(笑)その兄ちゃんをイメージしたのかな、多分。
大地:でも、パンサーに寄せて少しオラついてみたつもりが、僕らがやると、性格が出るのかやっぱりソフトな印象になりましたね(笑)
建太:そのおかげでNYA-ともシンクロしたのかも。
・定番&コラボアイテムにオリジナル刺繍を乗せた1点モノも
今回展開されるラインナップは、KENDAIさんver.のNYA-をグラフィックへと落とし込んだもの。そして、NYA-の定番アイテムである無地のシャツにKENDAIさん直々に刺繍を施してもらうものなど、1点モノのアイテムも制作中です。また、コラボアイテムにもさらに刺繍を加えてもらうという、スペシャルな一品にもチャレンジいただいています。
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大地:これはいわゆるタトゥー的に言うと、オールドスクールな猫って感じですね。僕が描き溜めた大量のデザインのストックや、普段からよく使うモチーフをスタンプ的に入れています。僕らは感覚でデザインやものづくりをするタイプで、それぞれの意味を深くは考えていません。考えすぎていたら、刺繍が増え続けてしまうと思います(笑)今回のこのシャツもそうですけれど、もともとあるプロダクトの良さを残せるよう意識して引き算してますね。
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大地:ここら辺は割とかっこいい感じで、白も使いました。左側の花の方は結構かわいい感じ。いや、でもこれは、ちょっとかっこいい感じになっちゃったかな。
ーーどちらかというと、かわいい感じになるよう意識されているんですか?
大地:刺繍って、もう既にかわいいじゃないですか。かっこいいものを作っても、「かわいい」ってなるんですよね。そこが良さでもあり、難しいところでもあります。他の刺繍作家は、花などの可愛くてほっこりした感じが多いんですけど、僕らは結構異質な感じなので、そこが目を引くポイントになると思います。
ーーこのスペシャルアイテムの制作には、どれくらいの時間がかかっているんですか?
建太:デザインが決まってから、ミシンで縫うのは1日から2日くらいかかりますね。手刺繍でやるとたぶん、1週間くらいかかるかな。大量生産と僕らのように量産できない制作スタイルの掛け合わせとして、今回のコラボで1点モノも作れるのはやっぱり楽しいですね。大変は大変なんですけど(笑)
コラボ商品への刺繍は、手元へ届いてから直感で何のモチーフを入れるかを決めたいと思っていて。実物を見るのをすごく楽しみにしています。何をどこに置くかは、やっぱり対象の物があって、実際にイメージを乗せてバランスを見てみないと分からない部分ですね。
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・KENDAIのクリエイションを支える道具と量産のバランス
ーーミシンがとても素敵だなと思ったのですが、道具に何かこだわりはありますか?
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建太:今使っているものは、ミシン屋さんで27万円くらいで買ったんですよ。スペアは、ヤフオクで見つけて2つ合わせて7,000円くらいで買えました。昔のミシンは造りがめちゃくちゃ単純なので、壊れにくいんですよね。電子系の部品が少ないので、部品さえあれば直せるみたいな感じ。でもこういう基板があるようなやつだと、その基板が壊れたらもう使えなくなっちゃう。
建太:これは「ゴールドクイーン」というメーカーで、昔のスカジャンとか、日本刺繍で使われているような「横振りミシン」という種類のものです。普通のミシンって、同じところにまっすぐ刺していくんですけど、これは横に振ってくれるんですよ。すると、刺繍を「描いていく」ように「塗り」ができるみたいなイメージですね。
横振りミシンは、色を少しずつ重ねてグラデーションをつけるなど、色々な表現ができるんです。手刺繍だと2、3週間かかるものも、横振りを使えば、1、2日で終わります。壁に掛かっているやつは全部手刺繍で作ってるやつなんですけど、これも大体2週間くらいですね。
実はこのミシン、よく持ち運ぶんですよ。イベントをやるときに台ごと持って行って実演したり。運ぶのは結構怖いですよ(笑)一回車から降ろす時に落としたこともあって…。鉄の塊でだいぶ重いので、足に当たらなくて本当に良かった。イベントの度に、二人で階段を使って車まで運び込んでます。今回のポップアップでも運ぶ予定です(笑)
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ーーその苦労を先に聞けて良かったです(笑)
大地:これは古い型なので、もし今持っているスペアまで壊れてしまったら、世界中から探すしかないですね…。その時は、コンピューター刺繍ミシンを活用するかもしれません。この機種は、横振りでは実現が難しいものや、ロットが100程度の量産が必要なケースに適しています。Illustratorなどのデータを刺繍のソフトに取り込むと、自動で刺繍してくれるんです。
ーー大量生産ができるということですね。
大地:刺繍を始めた最初の頃は、手刺繍とか、アナログのやり方を貫くのが一番カッコいいのかなって思っていたんですけど、それもそれで、あまり良くないこともあるじゃないですか。一つひとつに時間がかかりすぎて受けられるはずの仕事が受けられないとか。量産が必要になるような制作も僕らは大切にしたいんです。
ーー最後に、今回のコラボレーションへの意気込みを、KENDAI & NYA-ファンのみなさんへ向けて、お願いします!
大地:今回、コテコテのタトゥーモチーフというよりは、ポップで可愛げのある要素を大切にしました。僕らのようなまだまだ知られていない作家がエイ・ネットさんと一緒に仕事できるのってすごい貴重なチャンスだなって思っているので、そこはもう、KENDAIらしさ全開で表現します。NYA-のファンの方々にも、このコラボレーションを通してNYA-はこんな顔も持ってるんだと思ってもらえたら。今まで見えなかったNYA-というブランドの魅力も知ってもらえる機会になったら嬉しいです。
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(取材・文/須藤菜々美)

 

【POP UP SHOP】
■ 7/26(金) – 7/31(水)
CABANE de ZUCCa / Plantation 青山店 1F
港区南青山3-13-14
CHECK >>
■ 8/7(水) – 8/18(日)
渋谷PARCO 4F POP UP SPACE
渋谷区宇田川町15-1

 

【EVENT】
下記日時においてKENDAIが在店し、お買い上げのNYA-の商品(靴下を除く)にその場でシルクスクリーンプリントを施します。
プリントする柄は、KENDAIが提案する数々のグラフィックの中から1つお選びいただけます。
この特別な機会にぜひお立ち寄りください。

■ CABANE de ZUCCa / Plantation 青山店 1F
7/26(金)
17:00-20:00
7/27(土)
12:00-14:00 / 16:00-18:00
 
■ 渋谷PARCO 4F POP UP SPACE
8/17(土)
12:00-14:00 / 15:00-17:00
 

※A-net ONLINE STORE での発売は 8/1(木)10:00-を予定しております。

 
 


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