2025/04/30 | NYA-, FEATURES

上出瓷藝・上出惠悟さんと「NYA-」の異色コラボレーションに込められたデザインへのこだわり

伝統工芸の技法との化学反応!
九谷焼窯元「上出長右衛門窯」の六代目としても活躍する、
「上出瓷藝」の上出惠悟さんと「NYA-」のコラボレーション。
今回誕生した懐かしくて新しいデザインの背景に迫ります。
 
 
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ー 上出さんは創業140年を誇る九谷焼の窯元「上出長右衛門窯」の六代目でありながら、「上出瓷藝」として伝統的技法を活かした新しいデザインの提案など、磁器づくりだけに留まらない幅広い活動をされています。今回のコラボレーションの経緯は?
実は10年ほど前に「にゃー」とコラボレーションさせていただいているんですよ。そのときは上出瓷藝が運営する「KUTANI SEAL」という、九谷焼のデザインを身近に楽しんでもらうためのブランドとの取り組みでした。
それから時間が経ったある日、友人の小杉幸一さん(アートディレクター)から「NYA-」とのコラボレーションを打診されました。小杉さんは僕が過去にやっていたことを知らなかったみたいで、僕のデザインが「NYA-」に合いそうだからと声をかけてくれました。
10年前のコラボレーションもスムーズにできた記憶があったので、こちらとしても「ぜひ」とお願いしました。それで昨年、まずは「KUTANI SEAL」の「おめでタイガー」というキャラクターとのコラボレーションアイテムを制作しました。
ー Tシャツとバンダナの2種類で展開したアイテムですね。
虎(タイガー)の頭の上に鯛が乗っているというキャラクターが「おめでタイガー」で、その虎を「NYA-」に変えたデザインです。ありがたいことにそれも好評だったそうで、今回は「上出瓷藝」名義でのコラボレーションということになりました。上出瓷藝は僕が代表を務めている会社で、自社ブランドの企画・制作の他に、他社へのデザイン業務も積極的に行なっています。
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ー デザインにあたっては、「筒描き(つつがき)」という伝統的な技法を使われたそうですね。
筒描きは筒状の道具に糊を入れ、布や和紙などの生地(きじ)に模様を描く伝統的な染色技法です。
型を使わず1点ずつ染めていくため、豊かな表現が可能です。量産するなら型染めにするのがいいと思いますが、僕はあくまでも元となる原稿として用いることが多いので、この技法を用いています。具体的には和紙に描いた絵柄をデータ化して、今回はTシャツにプリントしてもらいました。
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ー では、今回のコラボレーションアイテムのデザインは、どのように発想されましたか?
まず、「NYA-」はキャラクターとしてかわいいですよね。そこが魅力なんですけど、どうしてもキャラクターのかわいさに全体が引っ張られてしまいます。しかも、今回はブランド側からいただいたテーマが「違和感」で、どうしたら違和感が出るだろうかと悩みました。
ー 要するに、どうデザインしてもかわいくなってしまい、「違和感」が出にくい、と。
だから、最初は振り切って考えました。パッケージに犬の顔のイラストがドンと描いてある、ちょっとレトロなデザインのドッグフードがあるんですが、あの犬を「NYA-」の猫に変えたら面白いんじゃないかとか。「猫なのにドッグフード」というのが一番違和感を感じると思ったんです(笑)。
ただ、具体的に検討したら、「これじゃない感」がすごくあって。筒描じゃなくてもいいデザインになってしまって、面白さが伝わらないと感じたんです。それで今度はまったく違うアプローチで考えました。
筒描きの表現ってどうしても民芸に寄ってしまうんです。僕自身もそういった民芸の染色作家に影響を受けています。だから今まで、あえて民芸に近づき過ぎないようにアプローチをしてきました。でも、「NYA-」の個性が強いからこそ、デザインとしては民芸ど真ん中みたいなアプローチをしたら、かえって違和感が出るんじゃないかと思ったんです。
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ー たしかに今回のアイテムの絵柄は、伝統的な懐かしいテイストを感じます。でも、よく見ると違和感がありますね。
そうですね。例えば、葡萄や松や藤の花といった染色によく登場する絵柄も、奥のほうから「NYA-」が覗いていることで、「なんだこれ?」って思ってもらえないかなと。よく見ると、里の風景の中に突然大きな「NYA-」がいたり、十二支の中に「NYA-」がいたりするのも違和感かなと思いました。
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筒描きでの表現は、ぎこちなさがあって、味わい深いので、油断すると〝ほっこり〟なデザインになってしまいます。それが悪いわけではないんです。ただ、説明が難しいですけど、〝ほっこり〟だけではお客さんをドキッとさせられない気がするんですよ。
でも、決してエッジが立ったことをやりたいわけでもないんです。僕自身、伝統的技法から大きな影響を受けているし、それが大好きでもある。それでも自分のデザインでは、これまでとは少し違う表現でお客さんに新鮮に驚いてほしいという気持ちがあります。二度見してもらうような。
だから、ベースとなっている絵柄としては伝統的だけど、「NYA-」の入れ方とか、文字の組み方の工夫とを組み合わせることで、〝ほっこり〟だけではない違和感をそなえた、スタイリッシュさを表現したいと思いました。
ー 「NYA-」とのモノづくりに関してはいかがでしたか?
何よりモノがいいですよね。服としてのクオリティが高いと感じます。縫製だけでなく、プリントの印刷も発色が良くて、今回のサンプルが仕上がってきたときも、修正するところがほぼありませんでした。
僕らは普段、基本的に白い和紙に染色をしています。今回のアイテムのようにピンクや黄色の生地には染色しないので、どのように色が出るのか不安なところがありました。でも、一発で仕上げてくださったので、さすがモノづくりのプロフェッショナルだなと思いました。
ー ありがとうございます。最後に「NYA-」のファンの方にメッセージをお願いします。
コラボレーションでしかなし得ない絶妙な違和感と、懐かしくて新しいデザインにできたと思います。ユニセックスになっているので、ぜひ男性も女性も着てみてほしいですね。僕も気に入ってるのでたくさん着たいと思います。
(取材・文/小山田裕哉)

 

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<プロフィール>
 
かみで・けいご
合同会社「上出瓷藝」代表
九谷焼窯元「上出長右衛門窯」六代目
 
1981年、石川県生まれ。2006年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
同年から1879年創業の九谷焼窯元「上出長右衛門窯」の後継者として多くの企画や作品の発表、デザインに携わる。2014年には「合同会社 上出瓷藝(かみでしげい)」を設立すると共に、企業の商品企画やパッケージデザインに携わる。磁器の制作だけでなく、九谷焼の転写技術を活かした「KUTANI SEAL」など、伝統に新しさを加えた取り組みを発表し続けている。
 
上出瓷藝(HP)
https://www.kamide-shigei.com
上出長右衛門窯(HP)
http://www.choemon.com/

 


Instagram

@nya__official

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