2021/06/04 |

tac:tac【Patterner’s Eye / 001】

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Patterner’s Eye / 001

デザイナーが作成したデザイン画をもとに意図やニュアンスを汲み取り、実際に服の造形を作る役割を担う、
「パタンナー」という職種があります。
今回はそのパタンナーの視点でtac:tacの商品を解説いたします。

tac:tacパタンナー、島村に今シーズン21SSの商品について語ってもらいます。
是非ご覧ください。

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— まず、自己紹介からお願いします。
島村:tac:tacのパタンナーの島村幸大太です。ブランドを立ち上げた2014SSから、tac:tacの考えや思いを、服を通して形作ってきました。パタンナー=設計図(パターン)を作る者として、日本では広くそのように呼ばれていますが、一言に設計といっても、構造や造形美の物理的なことから思想やムードなどの概念的なこと、生産工程などに関する量産システム的なことまで、デザインを服の形にするまでに考えること、照らし合わせることは多岐に渡ります。
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シーズンテーマについて。

— 今季21SSコレクションのテーマが「WINTER⇆SUMMER」でした。全体を通して伝えたかった事はありますか?
島村:21SSコレクションは、2020年の4月頃に製作の始まったシーズンでした。当時はデザイナー島瀬とも、“誰もがネガティブな状況下だからこそ、クリエイションを萎縮させても仕方がない、作り手として力強いものを作り、少しでも明るい未来を提示するべきだ”というような事をよく話していました。
根っこはそこだと思います。
季節感のレイヤード、軽やかさ、夏という季節を想起させるもの、どこかへ出掛けることができなくても、その時が来たら着ていきたいと想像できる、夏が待ち遠しくなるアイテムが多くあるコレクションになっていると思います。

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UN(I)FORMのシリーズについて。

— 20SSからスタートしたUN(I)FORMのシリーズですが、過去シーズンとの違いや、何か気を使ったことはありますか?
島村:同シリーズ内に於いて、シーズンとアイテムを跨いでボタンを掛けれるように仕様変更し、レイヤードの楽しみ方が広げられたことが一番大きな違いかと思います。ジャケットの上からコートを着て下側に着たジャケットのボタンホールを、コートのボタンに掛けれたり、またその逆も可能です。勿論シャツとも可能です。
20SS、20AWの同シリーズのジェケットとコートとも、シーズンを超えて同様の楽しみ方ができます。

— tac:tacはレイヤードスタイルを得意としていますよね。加えて着心地がよいのも特徴かと思います。
島村:UN(I)FORMシリーズを通して念頭に置いていたこととして、服のフォルムそのものが、着る人、着るシチュエーションを決めてしまわないバランスを見つけることでした。どんな人でも、いつどんな場所にでも着ていけるシリーズであってほしいと。
仕事でも、何気ない日常でも、デートの日でも、そんな日常の点と点がシームレスに繋がれば素敵だなと。
ただその言葉尻だけに沿って形を作ってしまうと、本当にシンプルなだけのジャケットになってしまいかねないので、分量感や、ドロップした肩先の身体への馴染み、そして軽やかさは 重要なポイントでした。
— 特にコート、ジャケットは肩回りがラクでした。
島村:袖山を高く座りの良い袖(一般的な所謂 スーツの袖)で、動きやすい運動量を確保する簡単な方法として、アームホールの深さを浅くし布を身体に近づけることが、一つの解決策としてパタンナーの中でも一般的には認識されています。U(I)FORMのアイテムで言うと、アームホールは身体を締め付けないよう深めの設定にしており、身幅と肩幅も広い、袖山の高さはしっかり高く袖の座りのいい袖で構成しているので、要素だけで考えると動きにくくなりがちなのですが、それらのバランスを少しずつ調整してラク=気張らず着れる着用感を目指しています。
— パンツのウエスト部分のフックは新しいディティールだったかと思います。
島村:ベルトステイループのことですね。古着のスラックスや、オーダースーツなどでよく見かけるディティールで、このループにベルトのバックルの爪を通して使用します。ベルトとパンツの前中心が固定されるので、ベルトが左右にズレない紳士的なディティールだと思います。私は一般的に見るとかなり痩せ型なのですが、昔から大きいパンツをベルトで絞るスタイルも好きでした。大きいパンツをベルトで絞るとパンツの前中心がベルトの下側にズレ落ちてしまい、非常にだらしなくなってしまいますが、ステイループがあることで上下にもズレなくなるので、ウエストが大きいパンツでもストレスなく履けることが個人的には1番のメリットだと思っています。

 
今シーズンを象徴するようなデニムSUNSET DENIM PANTSについて。

— ワークパンツがデザインソースだと思いますが、着用感はそこまで太くなく、特にヒップ周りがきれいなラインだと思います。
島村:ノータックですので、ヒップ周りがあまりタイトになり過ぎないように気は配りました。ヒップから股下にかけても、今回のシルエットでは綺麗に整えすぎると逆にカジュアルな印象から遠のいていってしまい、男性は着づらい印象のアイテムになってしまう懸念があったので、ほどよくゆとりを残しつつ、デニム本来のパターン構成から逸脱しないようにしました。

— デニムでありながら「無骨さ」よりも中性的な印象のパンツですよね。特にシルエットはストレートのつくりですが、履いてみるとフレアなのかな?と思いました。
島村:そうですね。裾の後ろ半分を踏み破ったようなラインでカットしたことで、つま先側に生地が伸びたように乗っかってくるだけの想定でしたが、 実際は裾の筒がえぐられることで前裾を固定する要素がなくなり、結果前側の裾が広がった印象になりましたね。個人的にも興味深い現象でした。今回のように加工を入れるものに関しては、想定と違う現象が起きることも少なくないのですが、その“想定外”が良い結果に働いた例だと思います。

 
色味がきれいなCHAMBRAYシャツについて。

— シャツジャケット風に作ったとのことですが、ジャケットとシャツとの構造上の違いは何でしょうか
島村:確かにジャケットとシャツでそれぞれ定番のディティールはあるのですが、見方によっては用途の差でしかないと捉えることもできます。特にシャツに関してはアウターとして着てしまえば、ジャケットの役割を担っているとも考えられます。インナーとして作られたアイテムはサイズ感やボリュームが伴えばアウターにもなってしまう拡張性がある、それは面白い現象だと思いますし、どんな方でも解釈一つでスタイリングの幅を広げられるのではないかと思います。

 
透け感が特徴のSEETHROUGH COTTONのシリーズについて。

— こちらはかなり落ち感のある素材かと思います。生地以外でこの落ち感を出すのに気にした点などありますか。
島村:製品染めをしたあとにバイオ加工を施したことで、ここまでの落ち感が出ています。サンプルが上がってきた時、よりニュアンスを加えるためにバイオ加工を施すことが決まったので、最終の柔らかいドレープの仕上がりは設計上では組み込んでおりませんでした。バイオ加工によってドレープの性質に変化が生まれ、表情により一層軽やかさがプラスされる仕上がりになりました。元々洋服が持っていた分量感も、生地の風合いが変わることでニュアンスが拡張される。そういった加工のアイディア一つでも、服に深みが生まれます。

— 軽くて柔らかい、軽快さのある商品ですよね。また、裏地も気を使ってますね。
島村:”季節感のレイヤード” というシーズンのキーワードのもと、 秋冬のオーバーコートの構成を、そのまま透け感のある綿生地で作ることで“暖かい季節でも着れる オーバーコート” を提案しようという意図でした。背抜きの裏地に関しても、表地と同素材を使うことで、洋服1着を通しての透け感=洋服のパーツがレイヤードされていることを視覚的に表現することに成功しています。 また本来ジャケットやコートに裏地を付ける目的の一つに、表地の透けを防止する という意図が含まれることがありますが、このアイテムに関しては“寧ろ全て透けさせる”という真逆の考えで成り立っているところが面白いところだと思っています。

— ありがとうございます。
最後に、普段からパターンを引くうえで色々なことから着想しているかと思います。どんなシーンでヒントを得ることが多いですか?

島村:日常の中ですと、通勤で街を歩いている時、電車に乗っている時はその時頭にある形や構造、またその課題などを思い浮かべながら移動していることが多いので、目の前にいる人の纏っている服や体型などを観察しながら、頭の中の形や考えと比較検証してることなどは多いです。

あと誰もいない道などではひたすらに縫製手順などが頭でループしていることも多々あり、色々仮説が生まれたりするのでそういった考えに耽れる時間は大切にしています。

また自身の周りでtac:tacを着てくれてる人がいたら、ついつい観察してしまいます。友人1人社員1人とっても皆体型の特徴や服の着方、またそのスタイルやスタンスも違ってくるので、作り手の意図と違う感覚で着てたとしても、そこで“その人の個性”を目の当たりにした時は面白く勉強になります。

 
 


 

デザイナーの思いを一番傍にいて、形にするパタンナー。今回はそんな縁の下の力持ちであるパタンナーの生の声を綴りました。tac:tacの洋服つくりに対する気持ちが少しでもご覧くださった方々に届けられることを願っています。本ページを読む前とは少し違った目線で21SSコレクションをご覧ください!

 

 


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