2016/06/02 |

DESIGNER’S VOICE / KAZUAKI TAKASHIMA

’16-’17 Autumn/Winter Collection
African Mix

神様が逆さにしたバオバブの木をもどしてあげよう。

いつものことだけど、なにか新しいものをつくりたい、そう思って次のコレクションのリサーチをしていたとき、『BLACK DOLLS』という写真集に出会いました。1850年と1930年の間にアフリカ系アメリカ人によって手づくりされた人形がたくさん紹介されている本です。
そこからインスピレーションを得て、アフリカをテーマにコレクションをつくることにしました。以前にも「roots」というテーマでアフリカがイメージソースになったコレクションをつくりましたが、人間のDNAがアフリカ大陸から始まった歴史があるから、アフリカには”原点”とか、大地と人間が一体になっているイメージがあって。そこにいろんな発展した国の要素をミックスしたら、なにか新しいものが生まれるんじゃないか、と思いました。
でも、つくってるうちに、なんだか違うなぁというか、、、、。自分の普段感じていることと、ミックスすることで新しいことを生み出そうというのは、イコールじゃないことに気づいて。
ネ・ネット
ネ・ネット
ネ・ネットは昨年10周年を迎えて、前回は牧歌的な生活にあこがれて「PASTORAL」ってテーマでコレクションをつくりました。毎日の生活で、自分のできる範疇で完結できるようなシンプルな生活。
結局、そのときにはもう、わかっていたんですね、僕…(笑) 今新しいのは、何かをミックスして足すことじゃなくて、素直な感覚を着飾らずに表現すること。

アフリカにバオバブっていう大きな木がある。僕の好きな『星の王子さま』にも登場する木で、とっくりみたいなかたちをして、根っこが逆さまについているみたいな不思議な木。アフリカのことを調べてたら、バオバブにまつわる物語を知って、とても興味深かった。



バオバブは地球上に最初に生まれた木だった。その次にやしの木がうまれた。やしの木はとてもすらっとしていてしなやかな姿だった。
バオバブはやしの木を見て、もっと背が高くなりたいと泣いた。その次にカエンジュが生まれた。カエンジュは真っ赤な花を咲かせ、とても美しかった。バオバブは花を咲かせるカエンジュをうらやましく思った。
その次には実をつけるいちじくの木が生まれた。バオバブは自分もフルーツを実らせたいと神様にお願いした。すると神様は怒って、バオバブの根を引っこ抜き、さかさまにして地面に突き刺してしまった。


次から次へと新しいものに気持ちが移って、自分が持って生まれたものだけでは満足しなかったバオバブ。皮肉だけど、消費を繰り返す現代の人間の生活になんだか似てるなぁ、って。
だから、神様が逆さにしたバオバブの木をもどしてあげようって思ったんです。自分に言い聞かせるように(笑)

ネ・ネット
ネ・ネット
今回展示会場に飾った人形たちは、自分たちでつくりました。「BLACK DOLLS」に触発されて。みんな、つくった人に似てるんですよね、おもしろい。僕もけっこう、ちくちくと縫うの好きなんです(笑) つくるのは、楽しい。
つくったものを、こうやって着てくれる人がいて、僕たちはいろんなものを共有できる。楽しい気持ちは伝わるし、丁寧につくったものは、きっと大事にしてもらえる。ネ・ネットはこれからも素直に、楽しく、丁寧に、みなさんの服をつくっていきたいと思ってます。
ネ・ネット

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